─水差しを持つ女─ ニューヨーク メトロポリタン美術館収蔵
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右下の赤いテーブルクロスが思いのほか明るく描かれているのが意外だった。
左上の、いつもの漆喰の壁に朝日によるハイライト部を配置し、その対比・対角
として右下はシャドウの要素を与えられているのだと思っていたが、
これは勝手な想像、思い込みだったようだ。

オランダ絵画にこの表現は合うのか微妙だが壁に掛けられた地図を下に引っ張る
風鎮、そして椅子の背もたれの飾り部。
どちらも女性の輪郭からわずかに離されており、緊張感を高める・絵柄をぐっと
引き締める効果があるように思う。

そして中心に描かれた女性のボネット(頭巾)に淡く投影された透過光と影。
ボネットは背景の漆喰の壁とは異なる白色で描かれ、その白さゆえに一般的な
庶民の生活の一瞬とは言えとても崇高な行為を表現しているように感じる。
そして絵に向かってやや右に傾いているこの女性の姿勢。
水差しを持ち上げようと力を入れる瞬間なのか、それとも持ち上げていた
水差しを今まさにたらいの上に戻す瞬間なのか。
こうして静と動を同居させているように見える。



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解説書によるとボネットに透過光と影がこの角度を保つのは10分未満。
恐ろしいほどの手際の良さでスケッチしたのか、それとも一瞬の
光と影を脳裏に刻み込み、それを模写するかのようにキャンバス上に
表現したのだろうか。

窓をつかむ右手は女性らしい華奢な腕とそこに当たる光と影を正確に
表現し、くっきりでも淡くでもない優しい輪郭線で背景の漆喰の壁から
浮遊している。

水差し、刺しゅう箱、壁の地図と寓意を想像させる物が描き込まれており
それぞれを丁寧にすくい上げれば絵に込められた絵描きさんの様々な思いが
くみ取れるのだろうが日常性、普遍性、庶民の当たり前の日常を忠実に
描かれた事の方が余程の説得力を見るものに与えているように思う。




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そしてたらいに反射するテーブルクロスにも手抜きのない細密な描写、表現が
与えられているが、決して表現の技巧に埋没することなく、嫌み無く
まとめあげられたこの作品。
やはり見るものをとても引き付ける。

神は細部に宿る───神様は大きなお祭りなど望んでおられず、ふとした
当たり前の日常の中に存在する真摯な信仰こそ尊ばれる───
王家を頂点とする貴族社会の不在、偶像を尊ぶことを良しとしないプロテスタント、
市民社会オランダ。
日常性、普遍性を表現した絵画が色あせない魅力の理由だと思う。



”天秤を持つ女”が見たい。
この絵もアメリカか・・・。


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2015年12月25日 京都市美術館にて
PENTAX K-5
DA 1:3.5-5.6 16-85mm
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by jpn2282 | 2016-07-17 16:08 | 展覧会 | Trackback(1) | Comments(0)
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